【選】日本一上陸困難な断崖絶壁の孤島「青ヶ島」完全攻略マニュアル ~vol.1【準備編】

(文と写真:杉浦博道氏。本記事は「作家たちの電脳書斎デジタルデン」2022年7月28日掲載記事を転載したものです。内容・状況などは記事作成当時のまま掲載しています)。

就航率が半分を切ることもある、荒波に囲まれた離れ小島

日本で最も上陸が難しいと言われる場所、ご存知ですか? 無人島や、有人島でも民間人がアクセスできない南鳥島なども困難ですが、公共交通がある(=民間人の誰もがアクセス可能な)中では青ヶ島でしょう。

青ヶ島はどこにあるか? それは東京。首都圏からだと、沖縄よりもはるかに近所。八丈島から約70km南に浮かぶ断崖絶壁に囲まれた孤島です。

孤島の有人島だけなら珍しくもないのですが、アクセスが非常に困難なことで知られています。交通手段は船とヘリコプター(ヘリ)のみ。いずれも八丈島からのみ発着しています。

ただし黒潮のど真ん中に位置することから、潮の流れが常に活発で、港に停泊できる確率は平均50~60%程度となっています…。欠航になることが多く、運航しても青ヶ島の港(三宝港)で何度も接岸にトライしたものの、諦めて八丈島に帰ってしまうことも珍しくありません。冬のほうが海が荒れるらしく、2月の就航率は48%まで下がります(約5年前のデータなので、今はもっと就航率は上がっていると予測されますが)。

※出典:『青ヶ島MAP』青ヶ島村役場

ならばヘリなら大丈夫では?となるも、そうは問屋が卸しません。平均80%近い就航率で船よりもだいぶ高確率ですが、霧が濃くなると着陸不可となり、しかも青ヶ島はよく霧がかかるんです…。
船よりも3倍以上という運賃も無視できませんし、何よりもとにかく予約がとれない。1日1便だけで定員はわずか9名なのです。

以上から、行くのも困難。上陸できたはいいけど、予定通り帰れる保障がほぼないのです。

島民も断言。そもそもヘリが予約できない…。

この旅の上級者向けのような(?)青ヶ島。アクセス困難と聞くと余計に行きたくなってしまう謎の心理が働いたせいか、その存在を知ってからずっと行きたかったのです(撮影禁止となると撮りたくなり、立ち入り禁止と貼り出されると入りたくなるドアホな私です💦)。

大学入学間もない頃に八丈島にいったことがあるのですが、海がすごくきれいで底に海面の波打つ様子が映し出されるほどの透明感。星は数えきれないくらいに見える夜空。大いに満喫しました。そして最南端で見た、青ヶ島の存在も忘れられません。その後青ヶ島を調べたら、衝撃の事実を次々と知ることになり、その後何年もずっと行きたくなってしまいました。

夏休みがある程度確保できることになり、最初は「バルセロナ→ミュンヘン→プラハ&その他周辺を」の1人旅を企みましたが、コロナが爆発的に増えてきたせいもあり断念…。ならば国内でと思って浮上したのが青ヶ島。とにかく予定が読めないので、「今しかない!」と判断したのです。ヨーロッパ周遊から原形をとどめないほど変わってしまいましたが💦

「善は急げ!」と、就航率が高いヘリ便をまずは確保することに。7月下旬に行こうとするも、×のマークだらけで予約が既に埋まってました…。

1カ月前から予約できるので、まずは行き(八丈島→青ヶ島)だけでも確保しようと、予約開始の朝9時から電話をしまくります。昔、チケットぴあやセゾンで電話で、人気アーチストのチケットを取ろうとした時のようなノリです。

■東京愛らんどシャトル
http://www.tohoair.co.jp/shuttle/

■東邦航空予約センター
04996-2-5222 営業時間 9:00~16:00 (日曜日休業)

でも電話が全然つながりません。ある日は会社の近くの公園で9時から始業の10時ちょい前まで電話。別の日は電車の中でも電話をし、つながったら次の駅に着くまで待ってもらって通話を企むも、話し中か「しばらく経ってからおかけなおしください」のアナウンスばかり。やっとつながった頃には、「すべて売り切れました」の返事が…。青ヶ島の島民ですら、「まず予約が、そもそもできない」と言っているほどなのです。

24時間見られる空席状況で、キャンセルを狙い撃ち

ならば作戦を変更。キャンセルもたまに出るので、虎視眈々と狙うことに。2泊3日くらいがちょうどよく、とにかく上陸することに意義があるので1泊2日でもよく、かといって長くても3泊4日だと思って探す作業は、まるでパズルを解くかのような作業。そして奇跡的に、それに合致する日程で予約できました!
こちらの「空席状況」から常時、確認できます。
http://www.tohoair.co.jp/shuttle/

結局7月上旬に行くことに。本当は7月下旬にしたかったのには理由があります。8月からは休みがほとんどとれないという個人的な都合だけでなく、梅雨だとヘリの就航率がガタ落ちする上、上陸できても霧が濃くて景色が堪能できなくなるからです。

とにかく予約しまくって、後でキャンセルという方法もあり、正直それも最初は考えました。運営会社が発表しているので載せてしまいますが、本当はお伝えしないほうがいいことかもしれませんけど…、キャンセル料はそこまでしないからです。同じことをしている人は、たくさんいそうな気がします。
出発の4日前までなら、キャンセル料は440円で済むのです。3日前から前日までなら2940円、当日は5740円となり、割と良心的価格なのです。
http://tohoair-tal.jp/ext/cancel.html

でも、1日わずか9人だけしか乗れず、私のような観光という呑気なお遊びではなく、仕事や生活のために使う島民の方の席まで奪ってしまうのは気が引けるので、やめましたし、そうしたほうがいいと思います。
一方で船ですが、こちらは定員に余裕があるので、就航率だけ気にすれば大丈夫だと、島民の方から聞きました。

■八丈島⇔青ヶ島 | 伊豆諸島開発株式会社
http://izu-syotou.jp/route01/

コロナ禍でも、ANAやJAL系のクレカを持ったほうがいい理由

これでヘリは確保に成功。これだけで、すごく疲れました…。次は八丈島への往復の手段を確保しないといけません。
八丈島への往復は定員を気にしなくていい船もありますが、飛行機でも運賃がそこまで変わらず、約10時間半かかる船に対して1時間程度で着くので、飛行機にしました。船旅もその良さがあるので、好みで選べばいいと思います。

飛行機にした理由はもう1つあります。それはマイルが使えること。八丈島空港は全日空(ANA)のみで日本航空(JAL)も飛んでいないのですが、ANAはスターアライアンス加盟航空会社。ユナイテッド航空やエアチャイナなをはじめ世界最大規模の提携が結ばれています。
https://www.staralliance.com/ja/about

自分は提携にあるシンガポール航空でオランダやエジプトにシンガポールやドバイを経由して行ったりしたこともあるので、マイルがたんまりとたまっていました。あと普段の買い物もマイレージプラスのクレジットカードを使うことで、少しずつマイルをためたり失効しないようにしました。
https://x.gd/r0Ecs

少し脱線しますが、コロナ禍の現在も国内なら少ないマイルで行けるので、クレジットカードをこのような航空会社系にするのも一考の価値があると思います(私は業者の人間ではありません。あしからず)。よく使う空港を調べたうえで、JAL系のカードを選んでもいいかもしれません。

どの空港にどの便が就航しているのかをまとめたとてもいいサイトがあったので、ご紹介しますね。
■日本全国の空港一覧と、ANA・JAL就航地マップ
https://x.gd/oKYCB

行きは日程が迫っていたのかわかりませんが、ANAの公式サイトを見ると空席がまだ残っているも、マイルはなぜか使えず、正規のやや早割で購入。帰りはマイルが使えました。

ヘリが確保できたら、速攻で航空券をゲットしないといけない理由

話を青ヶ島に戻します。飛行機もあと5席くらいしか残っていなく、「羽田→八丈島」も「八丈島→羽田」も間一髪で間に合いました💦

もし間に合わなければ乗船券を買えばいいだけと思うかもしれませんが、そんなに甘くありません。
「八丈島→青ヶ島」のヘリの登場受付は8:50までで離陸は9:20。一方で船が八丈島に着くのは8:55である上、八丈島の港(底土港)から八丈島空港まではタクシーで10分程度かかりますし、タクシーが港にいなかったら呼び出すのにも時間がかかります。船で着いてからその日にヘリに乗るのは無理だと考えていいでしょう。

もし航空券が取れなかったら、前日に八丈島に着かないといけなくなり、八丈島で1泊追加となります。
なお、八丈島からも船が無事に出ていたら、「八丈島→青ヶ島」の船の出発は9:30なので乗り換えは間に合いますし、このルートを使う人が実際は最も多いと思われます。

私の場合は、就航率の高さを重要視したので、青ヶ島まではヘリ優先ゆえに、八丈島までも飛行機にこだわったわけですが。
羽田と結ぶANAの飛行機も、青ヶ島を行き来するヘリも、いずれも八丈島空港を使い、ロビーも同じ建物となっています。

■「羽田空港⇔八丈島空港」の飛行機の時刻表
https://hachijoapo.net

■「竹芝桟橋(浜松町)⇔底土港(八丈島)」の船の時刻表
https://www.tokaikisen.co.jp/boarding/timetable/

■「八丈島⇔青ヶ島」のヘリの時刻表
http://tohoair-tal.jp/ext/timetable.html

■「八丈島⇔青ヶ島」の船の時刻表
http://izu-syotou.jp/route01/

宿の予約が済んでいないと、島には入れません


青ヶ島に行くには、まだまだやることがあります。それは宿の確保。島外の人は、必ず予約を完了しておかないといけません。海外を放浪するバックパッカーのように、飛び込みで予約は実質禁止されています。キャンプ場でも予約必須ですから。青ヶ島村の公式サイトにも、そのように明記してあります。
https://x.gd/VFhW7

理由としては民宿が6軒しかなく(個人的には、思ったより多いと思いましたが)、部屋もスタッフも物資も限りがあることかと推測されます。

しかも私が行った時には宿が一部休業していたので、定員がギリギリだっとところを、運営者が配慮してくれてなんとか部屋を用意してもらえたのです。ホントに感謝!

■「キャンプ・宿泊」青ヶ島村公式サイトより
https://x.gd/f6erP

島内はレンタカーのみ。ペーパードライバーの私はこうしました。


宿まで予約できていれば、青ヶ島に行くことができた状態となります。最後の仕上げなのかわかりませんが、準備編の最終ステージは、レンタカーの予約です。

私は20年近くペーパードライバーだったので、最初は自転車で島内をまわろうとしたのですが、レンタサイクルは存在しないとのこと。そもそも島内は起伏が激しく道が狭いので、自転車は向かないのです。

ならばとGoogle マップで調べたら、島の端から端まで歩いても1時間程度だったので全部徒歩も考えました。ただ島に着いてから知ったのですが、起伏もあったりするので相当の体力が必要となってしまいます。
それとこの島、道の崩落が非常に多いので、港から宿が全部集中する集落(岡部地区)までの最短ルートとなる道路(島の西側を通る幹線道路)が閉鎖しており、遠回りしかないため1時間半近くもかかってしまうのです。

※出典:『青ヶ島』青ヶ島村役場

宿のご主人からレンタサイクルがないこと、全部徒歩はやめたほうがいいこと、レンタカーの予約を推奨することを、こちらから質問もせずに全て言ってくれたのでそれを信じましたが、大正解でした。

それで自分はヤバイと思い、ペーパードライバー講習を受けることにしました。講習はこちらで見つけました。自分の都合で選べますよ。こちらは東京都内中心ですが他の道府県も同様のサイトはあるはず。
https://x.gd/8lVsB

日時や地理的な都合で急きょ選んだものの、とてもいい教官に出会えました。自分が選んだのは「ジャパン・ドライビング・レッスン」で、野上先生が優しくてわかりやすい指導をしてくださり、楽しい時間ともなりました。

■ジャパン・ドライビング・レッスン
https://x.gd/4QuRG

3時間講習を1回だけ受けましたが、青ヶ島内を運転するには大丈夫なレベルまでできるようになりました。

これまでの解説をもう一度まとめますと、

高確率で短時間で行き来したいのなら、まずは

1)「八丈島⇔青ヶ島」のヘリのチケットを確保し、それができたら日程を合わせるように
2)「羽田⇔八丈島」の航空券を購入します。
また、船でのんびり&就航率が下がるが安く行くという方でも、
3)宿
4)レンタカー(免許がない方は、全部徒歩か、運転できる人と一緒に行く)
は事前に予約しないといけません。

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以上が、青ヶ島行きの準備編です。少し脱線もしたとはいえ、これは全部通らないといけない通過儀礼となります。
ヘタに海外に行くよりも手間がかかり、難易度も高かったです💦 バングラデシュ、インド、ネパールを約20日間バックパッカーになって旅したこともあり準備も面倒でしたが、それとは全然違うタイプのハードルを感じました。

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次回からは、実際に行ってみた体験談をレポートします。乞うご期待!?
日本一上陸困難な断崖絶壁の孤島「青ヶ島」完全攻略マニュアル ~vol.2【1日目】

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