職業、開拓業。大手企業エリートから一転、人生どん底から自分軸をシゴトにしたワケ【前編】

「ご縁のあった一人ひとりと向き合い、その人のよいところにスポットライトをあてる舞台をつくりたい」。起業・複業支援、「日本焚き火コミュニケーション協会®」主宰、セミナー講師として活躍する三宅哲之(みやけ・てつゆき)氏の言葉です。現在、長野県と埼玉県の自宅を行き来する二拠点生活を送りながら、「ありのままの自分に戻れる場」づくりのため山の開拓を進めています。山のこと、焚き火のこと、コミュニティのことを話す三宅氏は、終始笑顔。目がキラキラ輝いて見え、なんとも楽しそうです。

そんな三宅氏ですが、実は、大手企業のエリート社員から一転、左遷、降格、減給、パワハラを受け、うつ状態になり辞職。転職先でも会社が倒産するなど、ジェットコースターのようなサラリーマン人生を経験されています。その後「好きを仕事に」を支援するコミュニティを立ち上げた三宅氏。人生どん底から現在の姿に至るまでどんな経緯があり、どんな信念を持ち続けたのでしょうか。(佑貴)

職業は「開拓業」 !?

——「働き方多様化コンサルタント」「焚き火場づくり師」など、多才な三宅さんですが、現在どのような活動をしているのか教えていただけますか? 

三宅:「あなたは何者ですか? どんな仕事をしているんですか?」と聞かれた時に「こう答えたい」というのが、この一ヶ月の間に頭に浮かびました。それは「開拓業」という言葉です。今、長野県で山の開拓をしているのですが、 その開拓という言葉に「業」をつけたもの。これは現時点で「僕の総称かな」と思っています。

具体的に何をしているかといえば、 一つ目は「焚き火の場づくり」。それで今、小諸(こもろ)という場所に土地を買って進めています。焚き火にこだわるのはコミュニケーションの場をつくりたいから。焚き火を囲むと自然に肩の力が抜けて、自分を飾らずに話ができるようになるんです。去年の12月末まで埼玉で「焚き火の宿」を4年間運営しましたが、「もっと広いフィールドで、もっと自由なことがしたい」という思いが当初からあり、今年の春から山の開拓にシフトしました。

「焚き火コミュニケーション業」は続けているけれど、新たに「開拓ツアー」をやりたいです。今、コロナ禍で「心がちょっと弱っている人」って多いでしょ? その人たちに「開拓やろうぜ!」と声をかけて山に呼んで、自然の中で心を洗ってもらいたい。開拓を始めた当初は考えていなくても、進めながら「あ、これもありかな、あれもありかな」と、どんどんアイディアを思いつきます。

もう一つが「身の丈起業」の支援をする「フリーエージェントアカデミー(以下FAA)」の運営。今、僕が提唱しているのは「一人商い(ひとりあきない)」。「一人で、身の丈で、大好きなことを仕事にしよう」というものです。最近は特に「50代」に絞って提案しています。絞った理由は、50代の人たちが今置かれた状況が、以前にも増して不安定という時代の要請。そして僕自身今年58歳なんですが、50代で自分の道をつくった経験からです。

(フリーエージェントアカデミーで話をする三宅氏)

コミュニティFAAを立ち上げてから今に至る起業・複業支援は主たる生業(なりわい)であると同時に、僕のライフワークです「人と向き合って何かをやっていく」ことは会社員時代から数十年ずっと自分の基盤にあります。 その中でさまざまなことを学ばせてもらうことが、僕の成長の源でもあります。

あと一つが「講演・セミナー業」です。テーマは、「職場のコミュニケーション」「上司部下の関係」「心理的安全性」「創業支援」など。エージェントさんの要望にお応えしながらも「自分の軸に即したこと」しかできないですが、メニューを用意しながらやらせてもらっています。 

「ゼロイチ」が好き

「開拓業」の話に戻ると、今お伝えしたものを全部ひっくるめて「開拓業」だと思っているんです。 

山の開拓は文字通り「開拓」ですよね。 そして、起業支援で言えば「人の開拓」です。その人の「内面の開拓」と言えるかな、「一緒に掘ってあげる」というイメージです。といっても、僕がやることは「ただ横でスコップを持っているだけ」かもしれないし、「一緒に掘ろうね!」と背中を押すことかもしれない。その人の本当の「根っこ」つまり原点を掘ることから始まって、「幹」ができて「枝葉」が伸びて「実」がなる。だから「人の開拓」です。

(小諸で開拓を進める三宅氏)

「ゼロイチ」が好きなんでしょうね、きっと。「何もないところ」から立ち上げていくのが大好きで「出来上がっているもの」には乗っかりたくない。フロンティアとか、パイオニアという言葉が大好きだということに、事業を進めていくうちに気づきました。

それならば「職業を開拓業と言おう」ってね。

「道を掘れば、心も掘れる」

——森を切り拓くという「物理的な開拓」を通して「自分の内面の開拓」ができるのは、なぜでしょうか?

三宅:例えば「道を掘る」があります。道といっても大きい道路ではなくて、幅2メーター位の道を少し削っていく作業をするんです。鍬(くわ)やスコップ、つるはしを持って「ガーッ」と削って掘っていくんだけど、やっている時はもう、そのことしか考えていない。 ひたすら目の前にあるものを掘り起こすだけです。根があって引っかかったり、石が出てきたりするから、それをなんとしても取る、それしか考えていないんですよ。

没頭しているうちに心が「真っ白」になる。そういう瞬間って普段、現代人には無いでしょ? いつも頭や心の中が「満杯」になっていますよね。だけど、ただ目の前のことだけに集中すれば、満杯状態が全部リセットされて空っぽになる。「再起動」が掛かって、本来入るべきものが入ってくるようになるんです。 

自然が相手だから自分が思ったようにならないし、何が起こるかわからない。だから、やることがとても「シンプル」なんです。 道のそこを削らないと車が通らないから、それだけに集中する。シンプルであるように自分がどんどん仕向けられていくんです。「原点回帰」というのかな、開拓にはそういう面がすごくあります。 

僕は、コミュニティを介して「モヤモヤした人」との交わりを長年やっているから「なんでモヤモヤするか」が分かります。「余計なもの」がくっついているんですよね、その人の中に。「その要らないものを取っちゃいな」と言いたいけれど、言葉だけでは取れないんです。そんな時に「スコップを持って一緒に掘る」と不思議なことに、物理的な行為からだんだん自分の中に入ってくる、そして気づきが生まれていきます。

終わった時の「爽快感」も格別です。「こんなに玉の汗をかいたのは何年振りだろう」「水ってこんなに美味しいの」と改めて気づく。そんな当たり前のことを、有り難いと感じられるようになるんです。よく言うでしょ?「当たり前の反対は有難い」、それを自然が気づかせてくれるんです

「余計なもの」がくっつくのは、なぜか。

——「余計なもの」がくっついているというのは、「何が」くっついていて、「なぜ」くっついてしまうのでしょうか?

三宅:僕のクライアントさんは、サラリーマン・・・組織で働いている人が多いです。サラリーマンの人たちは「鎧(よろい)」を着ていて「素の自分」を出せていないと感じます。もちろん組織だから、すべてを素の自分で通す訳にはいかないけれど。でも、それに慣れ過ぎてしまっています。

「余計なもの」という言い方は適切ではないかもしれないけれど。 「あなたが生きていく上で、それは本当に必要なことですか?」という究極の質問をしたら、「鎧」つまりは、本来の自分の上に何層にも分厚く重なっているものは「要らない」となるんじゃないかな。もちろん、余計なものがあるから成長できたという側面もあるから、無駄なものではない。でも「シンプル」に考えた時に、今の自分には要らないもの。それをできるだけ取りのぞいて「ありのままの自分」に戻って欲しいんです。

「他人のことはいいから、あなたはどうなのよ?」と聞きたい。 周りが強く言ってもダメですけどね。 それを自分自身に問いかけられる「場」をつくりたいです。 僕が「それでいいの?」と問うのではなく、その人自身が「本来の私ってどうなの?」と感じてもらえる「場の力」。「焚き火」も場の一つだけれど「山の開拓」で入り口が増えると思います。そんな思いで開拓を「遊びながら」頑張っています。 

幹部候補生だった会社員時代。CEOに直言して、人生どん底に!

——三宅さんもかつて、大手企業で会社員をされていました。会社員時代にパワハラを受けた話を伺ってもいいですか? CEOに「何でもホンネで話していいよ」と言われて、本当にホンネで話したら、大変なことになってしまったと・・・

三宅:いやぁ、人生何が起こるかわからないですよね。新卒で大手家電メーカーの子会社に入社して、現場で結果を出し、30代で本社に転属となりました。同期NO.1で管理職になり幹部候補生に選ばれてと、順風満帆なサラリーマンでした。そんな中、僕の運命を変える事件が起こります。

「幹部候補生研修」という一泊二日の研修、2日目の朝。CEOから「君たちは 選ばれた人材だ。会社の将来のために必要だと思うことを、是非ホンネで言って欲しい」と話がありました。

僕は、本社に異動になるまで10年以上、街の電気屋さんとの付き合いを通して「問題意識の塊」のようになっていました。「本部は全く現場のことを見ていない。現場を見てお客様目線で組み立てていけば会社は必ず良くなる」という信念を持ちながら、言えずにいました。「会社というのは、こんなにもホンネが言えない場所なのか」と、一生懸命やればやるほど感じていたんです。

そんな中、トップが「ホンネで」というからには「おっ、言っていいんだ」と思った訳です。 席上には10数名がいて順番に話していくけれど、皆ありきたりな話をしている。 「そういうことじゃないだろう」と感情のボルテージが上がる中で自分の番が回ってきました。 

話した内容は今でも覚えています。「会社は現場を見てない、お客様を見てない。だから上手くいかないんです。これは僕が現場で電気屋さんと長く付き合って感じたことです」。そこまでは正論だと思っています、ちょっと生意気だけどね。 

でも、その次に余計なことを言っちゃったんですよ。
「常務と部長との間で本当の意味でのコミュニケーションが取れていません。そのことで現場が困っています。改善すべきです」これが、まずかった。僕がその話をしている時、急に皆が押し黙って空気が凍りついたように感じて。話し終えて後ろを振り返ったら、僕の真後ろに常務が座っていました。僕が話している途中に部屋に入ってきたようです。 

常務は一ヶ月後に社長昇格が決まっていた人。そこから「次期社長を批判した三宅」というレッテルが貼られた人生に変わりました。

翌日会社に行ったら、部長に「このバカものが!」ってフロア中に響くぐらいの声で、机をたたいて怒られました。温厚で普段は全く怒らない部長が、血相変えて「今すぐ常務に謝って来い!」と言うから、僕も青くなって謝りに行きました。「申し訳ありませんでした」と常務に頭を下げたけれど、こちらに見向きもせず窓の外を見ていました。もう一度深く頭を下げて謝ったけれど、まあダメだよね、 もう。

それまでは、いわゆるエリートの幹部候補生。組織を上手に泳げば、良いポジションに就いていたかもしれない。でもその日から、左遷、降格、減給・・・ジェットコースターを下るような転落人生。あちこちの部署にたらい回しにされて「島流し」ともいわれました。大手銀行が舞台のドラマ『半沢直樹』のような展開・・・あれほど大げさじゃないにしても種類は一緒かな。「常務」と固有名詞を上げたのは若気の至りでも、誠心誠意に伝えたつもりだったんだけどね・・・ 

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(三宅氏がつくる焚き火の場)

さて、次週【後編】では、島流し、転職、ついに会社員を辞め、起業支援のコミュニティを立ち上げるに至った経緯や、三宅さんの「自分軸」にあるもの、そして、ここからのご活動についてお伝えします。
次回もぜひ、読んでいただけたら嬉しいです。

「焚き火コミュニケーション協会®」公式WEBサイト
https://jmtf.jp/
『そうだ、焚き火をしよう』三宅哲之著 ごきげんビジネス出版
http://amzn.to/3pwr3Dp

(文責:佑貴つばさ)


本記事は「作家たちの電脳書斎デジタルデン」編集部作成、2022年8月30日掲載記事を転載したものです。内容・状況などは記事作成当時のまま掲載しています。

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