仕事も趣味もやりたいことを徹底的にやる「ワクワク」起業のすすめ〜株式会社SALT代表取締役 土倉康平氏〜

クラフトビールとキャンプが趣味。お酒の場での人との交流をこよなく愛し、夏はTシャツ短パンで街を闊歩する。「お仕事は何をされているのですか」と聞かれることもしばしば。それが、今回インタビューする土倉康平氏だ。こう見えて、エンタメ、アパレル業界で20年間マーケティングに従事し、独立後は株式会社SALTを創業した現役の社長である。前職では執行役員を務めるものの退職。なぜ起業したのか? 不安はなかったのか? 一見、自由気まま、楽しく見えるその姿からは想像できない、確固たる信念があった。

趣味が高じて「株式会社SALTオリジナルビール」を製造。あくまでも趣味であり「SALTはクラフトビール会社ではないんです」とのこと。こちらは非売品

作りたいモノを作りたい。好きなことだけしたい。SALTはそれを形にする会社です

株式会社SALTは2019年創業、僕ともう一人の共同代表2名の会社です。プロダクトやサービスの課題解決、企業のブランディングに関するマーケティングコンサルティング会社です。オフィスを持たず、フリーランスや副業の方とプロジェクト単位でチームを組んでビジネスを展開します。各メンバーが無料のクラウドサービスを利用し、仕事は完全リモート。バックオフィス担当の女性は前職で僕の秘書をしていたのですが、現在パリ在住。パリにいながらにしてSALTの仕事をしています。SALTは創業一年目にしてグローバル企業になりました(笑)。

SALTでは近い将来「モノづくり」事業を展開します。自分たちの好きなモノ、ワガママな思いが反映されたモノを作り、それを世に届けることを実現したい。コンサルティングで得た資金をそちらに投資します。

会社員時代、自分たちが作りたいモノを作ろうとすると、市場のニーズをとらえて根拠を求められるので、しかるべき手順を踏んでいるうちに、結果どの企業も似たようなモノしか作れないなと感じました。マーケティングは大事だけれど、僕たちは真の価値を届けるマーケティングをしたい。

自分たちが作りたいモノ、きっと他の人も欲しくなるようなワクワクするモノを作って、それをお客様に届ける。SALTはそれを実現させる会社です。現在プロダクトはプロトタイプの状態で、これからどの業界にニーズがあり、どう届けるかを検討しています。それを世に出し結果を出すこと、これを5年以内に実現させます。

そのほかに若手起業家の支援や起業相談、ウェビナーを開催するほか、母校でゲスト講師として登壇もしています。これらの活動は自身のアウトプットの場としても役立っています。プライベートでは人とのつながりを作りたいという思いから、地域の活性化をメンバーとともに楽しむコミュニティ「中原おうちごはん」を運営しています。コロナ禍に開設したこちらのコミュニティは、もうすぐメンバーが3000人に達します。趣味のキャンプやクラフトビール作りも、コミュニティをつくってメンバーと共に楽しんでいます。

大学時代は明治大学体育会ラグビー部に所属。新人早明戦にてボールを持って走る土倉氏。この試合の年に明大ラグビーを支えた名監督、北島忠次氏が亡くなったため、黒い襟のユニフォームを着用して試合に臨んだ

会社を辞めて起業するには、ワクワクが勝たなければ無理な理由

前職の株式会社ドリコムでは、子会社となる株式会社ドリコム沖縄の立ち上げと代表取締役社長を兼務し、最終的には執行役員のポジションにいました。多い時には部下が200名以上いて、評価や育成、採用に大半の時間を費やしました。ふと我に帰ると、マネジメントに明け暮れ、自分自身が全く成長していない。仲間のことは大好きだけど現場からどんどん離れていく中で、この先この会社で、オレは成長の止まったオジサンになるのかと愕然としました。

やっぱり現場の仕事がしたい、自分の好きなモノを作って人に届けたい、自分のやりたいようにやってみたい。この思いが強くなりました。当時42歳。今ならまだ現場に戻れる。自分のやりたいことをやりたいと思ったら、選択肢は「起業」しかありませんでした。たとえ転職したところで状況は変わらず、上司の元で仕事するしかない。ならば自分で事業を起こそうと。

趣味のキャンプ。テントは3つ保有。まるでアウトドアショップの画像のように美しい

「やべー。起業したらやりたいことやれるぜー」とワクワクの状態だったので、会社を辞めて起業することが楽しみで仕方ありませんでした。「うまくいくか?」という不安は当然ありましたが、ワクワクの方が上回っていましたね。起業初月から売り上げを出せたのは、飲み友達に相談してお仕事をもらい、実績を作ったから。コンサルって無機物なので売るのが難しいんです。「僕たちがコンサルとしてお手伝いすることで、御社はこうなってこういう結果が出せますよ」というサンプルがあれば、お客様も「では私たちの会社のここをこうして」と具体的に頼みやすくなります。今ではSALTもおかげさまで3期目を迎え、お客様をご紹介いただきながらお仕事させていただいています。

でも、起業を誰にでも勧めようとは思いません。起業は自分で仕事を作り自分で売り上げを作らなければならないので、当然結果を出さなければ収入はありません。やりたいこと、成し遂げたいことが明確でないまま慌てて起業してしまうと、売り上げの無い不安に押しつぶされてしまいます。

起業しても多くの会社が潰れてしまうのが現実で、そうならないためにも「転職は難しいから起業するしかない」と考える方は、今の会社を焦って辞めてしまうのは一度踏み止まった方がよいと思います。ご自身のやりたいこと、成し遂げたいことが起業によって叶うんだ、と「ワクワク」を思い切り味わえる状態になった時、それが会社を辞めて起業を考えるタイミングではないでしょうか。

土倉康平「三つの流儀」

①3つのタグで自身をブランディングし、発信する

ビール、ラグビー、キャンプ。この3つを自分にタグ付けしています。僕の名刺には、ビール、ラグビーボール、キャンプのテントの3つのイラストがプリントされていて、「キャンプとビールのことは土倉に聞け」という雰囲気が周囲にできあがってきました。

クラフトビール造りに励む土倉氏

「クラフトビールが飲みたいな、土倉さん詳しそうだから飲みに行って話を聞こう」などと思ってもらい、そこからお仕事の話に発展することもしばしばです。現在親しくさせてもらっているクライアントさん、その社長さんの初キャンプを僕がアテンドしたこともありました。僕も楽しいし、クライアントさんに喜んでもらえるとさらに嬉しいです。

夢はキャンプ場を作ってクラフトビールのブルワリーを併設させることですが、これは完全に趣味の領域です。キャンプやクラフトビールの投稿ばかりSNSにあげているので、アウトドア関係の仕事かと聞かれることもあるんですけどね。自分の好きなことを発信し続けることで「面白そう」と思ってもらい、仲間を作るキッカケにもなる。

実際に以前ご招待いただいた「川崎市長と夢を語り合う会議」で無邪気に夢を語った直後、プライベートキャンプ場を作るチャンスが舞い込んだのです! 現在仕事の合間にキャンプ場作りも楽しんでいます。

起業したら「会社」=「自分」になるので、自分をブランディングする必要があります。そのためにはまず発信。SNSでの日々の発信がなければ知ってもらうことはできないので、自分をタグ付けしながら楽しく発信をはじめるとよいかもしれません。

②「人脈」が人生を大きく動かす

お金って「人」がいるから生まれるんですよね。だからたくさんの人脈があれば、その中で経済圏を作ることができる。デザインとかエンジニアとか、僕たちができない仕事も人脈さえあれば頼むことができて、結果的に仕事の幅が広がる。僕は会社員時代から意識して社外の人と飲みにいく機会を作っていました。仕事で接点を持った人や勉強会で知り合った人、優秀な人だな、話を聞きたいな、と思うと誘って飲み友になっていました。当時は起業するつもりはなかったけれど、結果的に起業する時に皆様に力になってもらえました。起業相談にくる若い方たちにも「お酒は飲まなくとも、機会を作って多くの人とご飯を食べよう」と伝えます。

個の時代が終わり、コミュニティの時代がやってきたといわれます。そこで、コロナ禍に地元の飲食店と人をつなげるコミュニティ「中原おうちごはん」を立ち上げました。これをきっかけに、中原区役所と共同でテイクアウトできる飲食店のマップを作り、区役所や飲食店に置かせてもらったり、現役川崎市長と未来を語り合う会議に招待いただいたりしました。そして今回、無印良品さんとの新たなプロジェクトが始動します。人脈が僕の人生を動かすと確信しています。

大好きなキャンプ場のひとつ「ほったらかしキャンプ場」。甲府盆地の夜景を見て気持ちをリフレッシュ。

③「効率」を重視する。やりたいことを全部やりたいから

学生の頃から、どうすれば効率よくできるかを常に考えていました。ラグビー部に所属していたので練習に忙しく、試験勉強もあるし眠りたいし友達とも遊びたいとなると、効率よく時間を使わなければすべて叶えることは無理でした。

ネガティブなことや不安なことは1秒でも早く忘れたいし、1秒でも早くポジティブに変換したい。マイナスなことに思考を割くのはソンだと感じます。40を過ぎたら時間も限られ、年齢を重ねるごとにさらにそう思うようになりました。ガムシャラに仕事だけしていたら趣味の時間がなくなってしまう。やりたいこと全部に時間を使いたい。自由な時間を有効に使い、仕事もプライベートも充実できるための起業、それを僕は「大人の起業」と命名しています。

「大人の起業」を実現させるために、価値観を大切にし、価値の合う仲間とだけ仕事させてもらっています。たとえ大きな案件をいただいても、価値観のあう仲間を外部から見つけられなければその仕事は断ります。価値観が違うとコミュニケーションもうまく取れずに時間がかかり、結果パフォーマンスが下がりよい成果が生まれません。起業当初はいただく全ての仕事を受けていましたが、軸を決めて「断る」選択肢を作ることで、うまくまわりだしたように思います。

こうしているうちに、自分もグチや不満を言わなくなりました。それから自分を取り巻く空気感がよくなったように思います。

これからの夢、こんな世の中になるといいな

この景色を見ながら飲むクラフトビールが最高。キャンプに行くため、日々の仕事に真剣に取り組むという土倉氏。

さきほど夢は「キャンプ場を作ってクラフトビールのブルワリーを併設させること」といいましたが、これは少し遠い未来かなと。今はコミュニティの仲間が集まるようなビアバーを作ったら楽しいなと考えています。会員制のビアバーにして、食べ物は周辺のお店からテイクアウトしてもらう。そうすれば地域の飲食店の活性化にもつながります。美味しいビールを飲みながら、未来や夢について楽しく語りあう場を提供したい。

これからの世の中がどうなるといいか、そうですね。もっと居心地のよい日本になるといいと思います。ひがみとか炎上とか、そういうモノがない世界に。残念なことに、政治家や有名人のスキャンダルを嗅ぎつけては叩くような風潮が日本にはありますが、それでは優秀な人がどんどん政治家を目指さなくなって魅力のない国になってしまう。寄付をすると売名行為だなどと叩かれることもありますが、気持ちよく寄付をすれば助かる人がたくさんいて未来がひらかれる、それでいいじゃないかと思います。誰かの恩恵を受けにくい環境を作るのではなく、みんなにとってもっと必要なことに時間やお金がまわる世の中になればいいなと思っています。

インタビュー中も大笑いしてしまうような話を折り混ぜ、サービス精神旺盛の土倉氏。
「無駄にポジティブ」といわれることもあるほどポジティブ思考だというが、そこには「大好きなモノと人に時間とお金をつかう」という土倉氏のブレない軸があり、それをまっとうするための「誓約」ともいえるような厳格ささえ感じた。

筆者がもし今起業したら、「いつ収入がなくなるか分からない。与えられたチャンスは決して無駄にせず全力で取り組もう」きっとそう考えるだろう。必死になって働かなければ明日の収入はないかもしれないのだから。

しかし土倉氏は違う。「もし明日から売上がなくなったら生活費を切り詰めればいいし、地方で自給自足の生活をすればいい、最悪テントで暮らせばいい。人脈さえあれば、仕事をくださいとお願いすることだってできる」と。

土倉氏の原動力は「ワクワク」だ。自分のやりたいことをやるために「起業」したい、会社を辞めて起業したくて仕方ない。その思いがあるからこそ、継続が可能となる。そして、土倉氏の「ワクワク」は決して独りよがりなものではない。それを実現させることで、周りの仲間もワクワクが伝染する仕組みが出来上がっているのだ。

「恐れや不安」さえ寄りつかない、究極の「ワクワク起業」の実態について土倉氏から聞き出した。

「ワクワクすること、やりたいことが見つからない人にはどうアドバイスしますか?」
この質問はあえて問わなかったが、きっとこう答えるであろう。
「人脈を作ることですね」と。人は一人では生きることができない。自分ができないことは、一人で頑張るよりも誰かに頼み、一緒にやる方がずっと効率がよく、なにより仲間ができる。一歩先ゆく賢人はそれを知っている。人脈を作れば、たった一人だった世界が大きく開かれるのだ。

今日がこれからの人生の中で一番若い日。今からでは遅いことなど、なにもない。

株式会社SALT
中原おうちごはん(川崎市中原区の飲食店と繋がるFBコミュニティ)
日本経済新聞にて土倉氏が紹介された記事


本記事は「作家たちの電脳書斎デジタルデン」編集部作成、2021年12月21日掲載記事を転載したものです。内容・状況などは記事作成当時のまま掲載しています。

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