【選】日本一上陸困難な断崖絶壁の孤島「青ヶ島」完全攻略マニュアル ~vol.2【1日目】

(文と写真:杉浦博道氏。本記事は「作家たちの電脳書斎デジタルデン」2022年8月4日掲載記事を転載したものです。内容・状況などは記事作成当時のまま掲載しています)。

朝食は家で食べるか、空港で空弁をかっこむか

新宿や渋谷と同じ東京都にあるけれど、秘境と呼んでも過言ではない青ヶ島。アクセスは日本では最難関を誇ります。前回のvol.1は準備編でしたが、準備だけでも5000字近くの長文になってしまいました💦(途中で何度か脱線はしていますけど^ ^; )

<前回の記事>
日本一上陸困難な断崖絶壁の孤島「青ヶ島」完全攻略マニュアル ~vol.1【準備編】

2回目となる今回は、行ってみて実際にどうだったのかを報告します。

「八丈島→青ヶ島」のヘリは9:20AMに八丈島発。八丈島で前泊せずにそれに間に合うには、羽田空港を7:30AM発のANAに乗らないといけません。国内線でも出発の1時間前までには空港に着いたほうがいいので、23区内在住ですが始発に近い電車で羽田に向かいました。前日は仕事で夜中の3時頃まで起きていたので、すごく眠いです💦

羽田ではそんなに面白い話はありません^ ^; ANAは第2ターミナルなので、それだけを間違えないようにすればいい程度です。京浜急行なら、終点の駅から第1も第2も同時にアクセスできます。まあ、400mしか離れておらず、徒歩でも行き来できますが。
■エアトリ「【国内線】羽田空港の第1・第2旅客ターミナル間の移動方法と所要時間を紹介」
https://www.airtrip.jp/travel-column/8594

コロナがBA.5の猛威により感染急上昇を始めた時期でしたが、空弁(そらべん)は買えて、機内で食べてOKでした。自分は密室の機内はやめたほうがいいと思い、空港のロビーでパパっと食べてしまいましたが。朝早かったので、家で食べる余裕がなかったことから、ここで朝食です。

なお、搭乗手続きのリミットとなる常識的な時間は、出発の30分前である7時までだと思いますが、空港内の飲食店はほとんど営業を開始していません。

フライトは1時間にも満たないので、機内食は出ません。お茶、コーヒー、ジュースくらいなら飲めました。

ヘリ便でも船便でも、八丈島に着いたら必ずすべきこと


八丈島空港はロビーがそんなに広くありません。青ヶ島行きのヘリのカウンター「愛らんどシャトル手続きカウンター」は端っこにありますが、フロアマップなどを見なくても、見渡せばすぐ見つかると思います。
■八丈島空港ビルのフロアマップ
https://hachijoapo.net/facility/

カウンターで予約した情報を伝えて、チケットを受け取ります。予約履歴画面の出力紙やスマホの画面を、あらかじめ準備しておくとスムーズです。

次に荷物の重さを量ります。5kgを超える場合、1kgごとに240円発生します。良心的な価格ですが、自分は荷物がかなり重量級だったので、15kgくらいまでいってしまいました^ ^;
時間を持て余したり島から帰れなくなった場合に備えて、ノートパソコンや書類や参考文献など仕事道具をごっそりと持ち込んだうえ、星空撮影にも備えてゴツい三脚とミラーレス一眼カメラの一式を詰め込んだことで、こうなってしまいました…。
ただ、荷物を持ち歩く体力があり、片道で2千~3千円程度の出費を惜しまないのなら、今思ってもこれで正解だったと振り返っています。

ヘリの中は暑いのでと、オリジナルのうちわももらえました

ヘリに乗る準備ができたら搭乗を待つだけ、とはなりません。恐らくどの宿やレンタカー業者でも同じですが、ヘリが予定通り飛ぶことを電話で報告します。船に変更になった場合は、到着時間や場所が変わるからです。ヘリも船も欠航になった場合は、日も変わってしまいます。
レンタカーは、ヘリポートないし港まで車を運んできてくれます。島外の我々が、ヘリポートや港からすぐに車に乗れるようにしてくれるのです。

ヘリは人生で初めて乗りました。揺れとか怖さがもっとあるかと思いましたが、そうでもなかったです。飛行機が怖くないのであれば、恐れることはないと思います。

音はうるさいですが、隣の人の会話は聞こえるレベル。ただ、フライト時間が30分にも満たなかったので気にならなかっただけかもしれず、もっと長ければ耳栓や、パイロットが装着しているヘッドホンのようなもの(ノイズキャンセリングヘッドホン?)がないと耳がおかしくなるかもしれません。

飛行機より低空飛行なので飛行機よりも雲や海がしっかり見えて、意外にも、出会えないような絶景を堪能できました。

左は八丈小島で、右が八丈島

日本でここだけ!? 独自の交通ルール


ヘリは集落のある島の北側の岡部地区に到着します。今回自分が予約したのは、青ヶ島整備工場が運営する「青ヶ島レンタカー」。軽自動車を丸2日間借りて、計8千円。これにプラスしてガソリンを満タンにして返すだけなので、11750円で済みました。ガソリン満タンで用意してくれるので2日間乗り回してもガス欠にはならず、ガソリンスタンド併設で最後の給油はスタッフさんがしてくださるので、お金を払えば終わりです。

■青ヶ島レンタカー
https://x.gd/CnyZl

5人以上で1台に乗らない限り軽自動車で十分、というかむしろ軽がいいです。これはスタッフさんもおっしゃっていましたが。オートマ車を貸してくださいました。

というのは、青ヶ島は道が狭いことがまず1つの理由。それと島内全ての道路は速度制限が30km/hなのです。

そしてもう1つ、独自のルールが。島に行けば必ず知らなければいけないことなので書いちゃいますけど(注意が入ったら消します)、キーは “差しっぱなしにする” のがルールとなっています。
理由はちゃんとあり、教えてもらえました。狭くて起伏が激しい場所が多く、路上駐車かそれに近い場合に近くに運転主がいない時は、すれ違えるように他の人が運転して、車をどかさないといけないこともあるからだそうです。
あとは推測ですが、断崖絶壁の島で老朽化が進んだせいか道路の崩落が多く、よく霧がかかることから事故が起きやすく、有事に備えて誰でも運転できるようにする措置なのかもしれません。

なお、信号機は1か所だけありますが、これは子供たちが島外に行った際に信号を守れるようにするための教材とのこと。横断歩道も、ここだけだったと思います。日本最西端の与那国島も、確か同じだったような。

レンタカーのスタッフさんも宿のご主人も、ヘリポートまで迎えに来てくださっていて、温かさを感じました。まずは「青ヶ島レンタカー」の事務所まで、先導してくれる車について行き、向かいます。事務所に着いたら、詳しい地図や要所の行き方を詳しく教えてくれます。崖崩れの危険性などの理由で通行止めが多くて、少しビビりました。

宿は元村長さんが経営する所へ


宿選びは、どこもスタッフさんのこだわりや個性が面白そうで迷いましたが、「海の見える部屋」と「元村長さんが経営」というのに惹かれて「民宿マツミ荘」にしました。価格もリーズナブルで、無線LANが完備されているので仕事ができそうだったのも理由です。実際に通信速度は快適でした。一部の宿が休業だったので混んでいましたが、「海の見える部屋」を用意してくださり、本当に感謝です! 曇りが多くて海がほとんど見えなかったのが残念ですが(涙)、たまにちょっとだけ見えました☆

■青ヶ島の宿泊施設一覧
http://www.vill.aogashima.tokyo.jp/tourism/stay.html

元村長さんということもあり、島のあらゆることを知り尽くされていて、時間があったらもっとお話しを聞きたかったです。居酒屋、港のことなど日常生活や旅に関する情報も教えてくださいましたし、島の歴史などの話にも興味を惹かれました。

島の人口は170人弱で、行政区域は東京都青ヶ島村のみ、丁目も番地もなく無番地。名前だけで郵便や宅急便が届くそうです。配達員が全員の家を把握しているようです。人口は日本で最少となっています。

宿のご主人は佐々木宏さんという方なのですが、佐々木さんによると青ヶ島は、政治系は佐々木姓が多く、神社は奥山家、商売や工事などビジネスは広江家と菊池家が多く(傾向として)、この4つの姓で人口の多くを占めるそうです。1785年に火山活動で全家屋63戸が消失するも、佐々木次郎太夫が中心になって約40年ぶりに全島帰還を果たし、佐々木家は当時から政治的な役割を担っていたようです。

で、宿のご主人の佐々木宏さんについては宿内にポスターが貼ってあり、演歌を歌いCDも出されているくらい活動的な方でした!

テレビは東京23区と同じものが映ります。ただ11チャンネルにすると、港とヘリポートのライブ中継が見られます。欠航が多い島の交通手段にかかわりますから、超重要です。ご主人はこの映像だけで、欠航になるかどうかが、ほぼわかってしまうそうです。

「ネコはよく見かけたのですが、犬は飼うのを禁止されているんですか?」と聞いたところ、飼っている家もあるらしいです。でも放し飼いは絶対にしておらず、ルールが守られているとのこと。噛みつかれるケガや感染で、医療機関を圧迫しないための策だと思われます。吠える声を全然聴かなかったので、意外でした。

世界でも珍しい景色が堪能できるかも、これまた運次第…


島の観光の定番の一つが、最高地点の大凸部(標高423m)をはじめ高い位置からの眺め。二重カルデラという世界でも珍しい構造をしているので、その様子を堪能できます。

でも霧が濃くて、行く前から無理だと思っていたところ、さっき登ってきたという方とすれ違い「何も見えなかった」とのことで…。

テンション下がりまくりですが、もともとこの島自体、生身のカラダで上陸することに意義があるという主旨で来ているので、当然(?)登ります。頂上で30分くらい粘ったと思いますが、予定通り何も見えないまま下山しました。



こちらはphoto ACより。晴れていればこの景色が肉眼で見れたんです!

ずっと曇っていましたが、とりあえずもう一つ代表的な高い場所の尾山展望公園に向かいます。結局は、霧が濃すぎるので途中で引き返しましたが…。

ただ、途中に緑色で塗られた斜面があり、有刺鉄線で物々しく侵入を防いでいて、不思議な光景でした。これは集水面と呼ばれる施設でした。海水で囲まれていて生活用水の確保も一大事となりますが、ここで雨水をかき集めています。

島唯一の商店「十一屋酒店」の休業日は必ず知っておくべし


観光の定番その2は、地熱でクッキング。火の際を語源とする島言葉「ひんぎゃ」と呼ばれる穴からは、蒸気が常に噴き出しています。90%以上水分なので毒性は気にしなくていいとのこと。60℃程度なので、少し触るくらいなら平気で火傷はしませんでした。

島の南半分は池之沢地区と呼ばれ、二重カルデラになっていて、ひんぎゃが点在しています。地熱釜もあり無料で使えます。釜の下部にあるコックをひねると、地熱が出てきます。終わったら戻す(閉じる)ことをお忘れなく。

食材は、島で唯一の商店「十一屋酒店」で購入。店員さんにオススメの食材を聞いたところ、卵、ソーセージ、じゃがいも、玉ねぎとのこと。1個からバラで買えて、じゃがいもはサイズがバラエティに富んでいましたが、小さいほうが調理しやすいとのこと。

「十一屋酒店」は日曜日がお休み。お酒も菓子も土産も、あらゆるものが手に入りますので、非常に重宝します。覚えておいてください! 地熱釜に行った2日目は日曜だったので、前日となる土曜日に買い揃えました。

ちょうどこの島に来る前に、NHKの『100カメ』という番組で、青ヶ島が特集されていました。それをオンデマンド配信でお金も払って視聴したのですが、主演者のオードリーの春日さんが、「ここのおばちゃんに嫌われたら終わる」というようなことをおっしゃっていましたけど、激しく同意しました^ ^;
店員さんは皆さん、とても親切でいい方ばかりでした。

青ヶ島に上陸した人だけが飲める酒がある


宿はどこも3食付きが基本。というのは商店が1軒のみ、居酒屋さんが3軒ほどあるだけで、食堂やレストランが全くないからです。

泊まった「民宿マツミ荘」の食事はボリュームがあり魚も肉もあって美味しかったのですが、せっかくなので居酒屋にも一度くらい行こうと思いました。お昼にご主人に伝え、夜は外食で了承していただきました。

「居酒屋一人」という店に入りました。昼に大凸部ですれ違った観光客の方とも、再会しました。世間というか島は本当に狭いです^ ^;

せっかくなのでいろんな料理を頼みましたが、「クジラヨ(別名はテンジクイサキ)」という魚が珍しく、蒲焼が香ばしく塩加減が絶妙でした。クジラヨは臭いことも多いらしいですが、臭みは全くなく調理の技術の高さを感じました。シンプルで飽きのこない味です。

居酒屋でも、あれば宿など他ででもいいのですが、必ず試したいのが「初垂れ」。「はなたれ」と読みます。青ヶ島の焼酎「あおちゅう」の中でも、アルコール度数60度の強い酒です。蒸留の際に最初に出てくる濃い部分だけを集めてあります。強すぎるので通販もしておらず、島に来た人だけが飲めます。元々焼酎はそんなに飲まないせいか、味は理科室にあるエタノールという感じでした(味音痴ですみません💦)

実は最初は、宿のご主人が紹介してくれた別の居酒屋さん(Aとします)に行く予定でしたが、「居酒屋一人」もよかったです。当初の予定のお店Aは閉まっていたのです。でも、帰りに宿のご主人の車とすれ違ったら、「さっき、Aに行ってきたよ。閉まってたから空けてもらったんだ」とのことで(書いちゃっていいのかわからないので、店名は伏せます)。このユルイ感じも青ヶ島ならではで、心地いいと勝手に思いました^ ^;

続きとなる2日目は、
日本一上陸困難な断崖絶壁の孤島「青ヶ島」完全攻略マニュアル ~vol.3【2日目】
にて。

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