【選】日本一上陸困難な断崖絶壁の孤島「青ヶ島」完全攻略マニュアル ~vol.3【2日目】
(文と写真:杉浦博道氏。本記事は「作家たちの電脳書斎デジタルデン」2022年8月11日掲載記事を転載したものです。内容・状況などは記事作成当時のまま掲載しています)。
<前回の記事>
日本一上陸困難な断崖絶壁の孤島「青ヶ島」完全攻略マニュアル ~vol.2【1日目】
地熱釜に食材セット→丸山ハイキングが王道
丸一日使える本日は日曜日。商店や居酒屋さんは閉まるので、昨日どちらにも行っておきました。今日は二重カルデラのある池之沢地区をメインに、通れる道を片っ端から行ける所まで進みます。
池之沢は人も住んでなさそうで、公道沿いですらジャングルの奥地に来たような景色でした。オオタニワタリというシダの一種などが元気に成長していました。この草は、青ヶ島名産の焼酎「青酎(あおちゅう)」の製造にも使われます。
内輪山(ないりんざん)となる丸山の尾根を一周します。時間もあるのでのんびりハイキングしていたら、1時間かかりました。地図で見ると小さそうなのですが。ここでも霧が濃くて、下界がほとんど見えませんでした。
丸山ハイキングでお約束となるのが、近くにある地熱釜に食材をセッティングすること。昨日買っておいた食材を窯に入れます。蓋をして重しとなる石(そこらじゅうにある)を乗せて、釜の下部にあるコックをひねれば地熱が出てきて準備完了。そうしてからハイキングをして1時間もすれば食材に熱が通ります。
卵はしっかり固まっており、ソーセージとじゃがいもは手づかみしても大丈夫な程度の熱さ。しっかり蒸されていました。玉ねぎはもっと小さいのにしても良かったかも。少し辛みが残ってしまったからです。
ソーセージをかじってその塩やスパイスの味が口に残った状態だけで、他の食材を食べても十分にイケました。全体的に味も温度も優しくて、いくらでも食べられそうです。
ただ後で思い出したのですが、「ひんぎゃの塩」という青ヶ島特産の塩を買っていたので、これを振りかければよかった…。素材の味がもっと引き立ったはずなので。
着替えだけ持参で、浴槽とサウナに浸かれる
近くにサウナがあるも、14時からでまだ時間があったので、それまでの時間を潰すべく、通ってない道路を隅から隅まで行ってみます。
その一つが、かつて使われていた大千代港に通ずる道。途中から通行止めになっていました。その先は残念ながら崩落し、2名が死亡、1名が行方不明になったそうです。崩落の跡が、土がむき出しの状態で生々しく残っているのが確認できました。
少し青空が見えてきて、青っぽい海や草が見えてきました。
「ガケ崩れの危険あり」で行き止まりになった道も行きました。ここは森林を突き進むと「恋ヶ奧の大杉」なる樹齢230年以上の杉の木があり、パワースポットになっているようです。
https://www.mapple.net/spot/13024722/
個人のサイトによると、島の人がガイドしてくれる場合もあるみたいです。船やヘリが欠航して滞在延期となると、島でもらえる公式のMAPには紹介していない場所にも行き出す傾向があるようです。
私は自力で行って帰れる自信がないので、おとなしく引き返しました。
サウナが営業開始したので、入りました。大人は300円で、タオルも貸し出しているのが嬉しいです。宿にはタオルがなくタオルを持参するのを忘れたので…、ここでやっと一風呂浴びられます。
浴槽もあり、ボディソープ、シャンプー、コンディショナーが完備されています。着替えだけ持参すればOKなのです。
直に触ってもそこまで熱くなかった地熱ですが、風呂場は色々と熱かったです。浴槽のお湯は45℃近くで自分は江戸っ子じゃないから5秒も入れず、サウナもかなり熱くて3分程度でギブアップしました…。
入り口には自販機もありました。なお自販機は、「十一屋酒店」と「居酒屋おじゃれ杉の沢」の近くにもありました。「十一屋酒店」は日曜日が休みで24時間営業ではないので、夜中や早朝に飲みたくなったらこちらへ。
今日も「よく曇っていた」ので、山頂からの眺めも無理となりました…。仕方なく丸山が見渡せる道路の途中で、撮影しまくりました。プリンと呼ばれる所以がよくわかりました。縞模様で不思議なんですが、溝があるように見える低い所に、椿の木を並べて植えているからだそうです。
宿に戻った後は、集落の探索。小中学校が合体しており、近くには保育所があります。高校からはないので、中学を卒業すると島外に出るようです。
ヘリポートに近い場所に美容室があったのが意外でした。普段は内地に在住する方が、宿の敷地内に作ってもらったそうです。
■青ヶ島の美容室 assisted by(協力) 御宿為朝
https://x.gd/cTF1j
青酎が15種類も試飲できる!
夕方(18時から)にもちょっとしたイベントを計画していました。青酎の工場見学です。「青ヶ島酒造」では杜氏が集まって、各人が趣向を凝らし個性を出しています。青酎とは、原料がサツマイモで、オオタニワタリというシダの一種の葉で蒸した麦を覆って作る自然麹を使って製造するお酒。
ここではなんと15種類も試飲させてくれるということ! 贅沢というか、杜氏の心意気というか。オーソドックスで癖が控えめのもの、オオタニワタリが効いたせいか草の香りが強くスッキリとした「青酎池の沢」、甘みや辛みが混ざり合ったようなユニークな「あおちゅう広江順子」などバラエティ豊か。
ちなみに「あおちゅう広江順子」はこちらで、「青酎池の沢」は「十一屋酒店」で買いました。
野生のコウジカビや蔵の壁面に付着した酵母を使うことから、同じものは二度と作れないそうで、より何年製造なのかも注目したいところです。
青酎試飲は要予約だったので、電話で予約完了した際に、宿のご主人にその旨を伝えると、夕食を置いておいてくれました。とんかつが出てきたので、せっかくだからと「十一屋酒店」で土産用に買った「ひんぎゃの塩」「ひんぎゃの味わい塩水」「ひんぎゃの塩×湘南レモン」を全部試します。
「ひんぎゃの塩」は黒潮の海水を使い、地熱で作る世界でも珍しい塩。結晶化まで一般的な塩が1日で済ますとところを、ひんぎゃの塩はじっくりと13日もかけます。それで粒が大きくなり、塩辛さが抑えられ、塩が本来持つ甘みや旨味を感じ取ることができるのです。
黒潮の海水はプランクトンが少なくカルシウムが豊富で、その量は一般的な塩の60倍にもなります。
実際にとんかつにかけて食べたところ、「ひんぎゃの塩」はまろやかな塩味、「ひんぎゃの味わい塩水」は思ったよりもズシっと塩辛さが寄せてきて、「ひんぎゃの塩×湘南レモン」はそこまでレモン味が濃くないとはいえ、個人的にはこれが最も好みでした。とんかつとの相性という面では。
料理によって、どれが好みかは変わってくるはずなので、家に帰ってからも色々と試して楽しめそうです。
こちらは、「ひんぎゃの塩」使用の羊羹。塩が入ってることがハッキリとわかるシャープな味ながら、しょっぱいまでいかない絶妙な配合が特筆。
次回はいよいよ3日目となる最終日。というか、果たしてそうなるのか!?
なぜなら、青ヶ島の交通はとにかく欠航が多いから…。
日本一上陸困難な断崖絶壁の孤島「青ヶ島」完全攻略マニュアル ~vol.4【3日目】